大家さんの悩みの1つで「建物の老朽化」があると思います。建物が老朽化すれば、防災面、安全面で不安なことがたくさん出てきますが、建替えをするとなると金銭的な問題を筆頭に、古いビルだといろんな問題が出てくることがあります。
先のことまで考えて、建替えのことも一度は想定しておきましょう。
以前、知り合いに大家さんを紹介してもらいました。その大家さんからの相談でビルの建替えをしたいという話をもらいました。しかし詳しく話を聞いてみると、いろいろと大変そうなことがありました。
・所有者がたくさんいる
1つのビルなのですが、土地がいくつかに分かれていて、所有者が何人かいました。そして、その上の建物ついても所有者が何名かが共同で所有していました。しかも、このときに相談してきてくれた人は、その中の1人であり、まだ全員が建替えをしたいという総意があるわけではないらしいです。
建替えと行ってもタダではなく、もちろんたくさんのお金がかかります。場合によっては借り入れをしないといけないですし、1人辺りの出費でも何百万円になるので、金銭的に余裕がない人がいれば、話は難航しそうな感じです。
う〜ん。なかなか大変そう。
とりあえず、方向性を決めて説得することにして、その問題は後回しにすることにしました。
・現状の店子の問題
建物を建て替えたいと行っているのは大家さんだけで、現在ビルの中にはまだ店子が入っています。問題としてはその店子をどうするかということです。
建替えをするのであれば、その期間は店が使えなくなるので、例えばその期間の営業保証を支払うとか、建て替えてもまた内装工事をしないといけないので、内装工事の費用は誰がもつのかとか、工事期間中に仮店舗を用意しないといけないのかとか、仮店舗としても工事期間の数ヶ月だけ貸してくれるのかとか、建替え後には家賃をあげないと収益があげられないのではないかとか、いろんな問題があります。
その1つ1つをクリアーしていくのは無理なので、現実的に解決できそうな問題をクリアーする方向で、無理なところは妥協する、もしくは説得して納得してもらうしかないという話にして、こちらで方向性を決めて話を進めていかないと収拾がつかない気がします。
・期間が限られるという問題
この建替えの話には、実は期限がありました。もともと、この老朽化したビルの隣にある大きな銀行を建て替えるという計画があり、その期間なら通路が狭いこのビルでも隣の敷地からも工事ができ、建替え工事がし易いという話がありました。
そのため、その銀行の建替え工事に期間を合わせないといけないため、デッドラインが決められていました。これも難しい問題です。
・土地の接道している部分が2mに満たない
これが一番の問題なのですが、現在の建築基準法だと敷地は2m以上道路に接していなければ建てることが出来ないのです。ここのビルの敷地は少し変わっていて、薄いビルが長く道路に接していると思ったら、そのビルの前の道路は私有地で、本当に道路に接している部分は、その私有地と公共の道路の部分です。その部分が2mに満たないということで、そもそも建替えが出来ないのではないかという話でした。
・とりあえず現地調査へ
現地を見てみれば何かアイディアが浮かぶかもしれないと思って、現地に行ってみました。確かにものすごく細い通りです。
個人的には、こういう古くて細い通りは好きなのですが、やはりこういうところに建っている建物は老朽化が進んでいることが多いので、建替えをしたいという気持ちはあるのでしょう。
とりあえず、公道との境界にある杭を確認してみました。
敷地の目の前の公道はきれいにしてあったので、当時新しくしたっぽい杭が残っていました。しかし、古いところなので、釘のような杭と、昔使っていたようなコンクリートの杭も残っています。とりあえず、両方の長さを測ってみました。
結果、、、だめでした。
どちらの杭を基準にしても2mには足りません。193cmという絶妙に足りない数字が出てくるだけです。
惜しい、、、
惜しいんだけど、ちょっと足りない。役所の答えとしては2mに足りないとダメと言われて終わりなんだろうな。建物を建てるときには役所へ行って建築する建物の図面を持って行って「建築確認」を取得しないといけないのですが、これでは接道義務を果たしていないので、確実に許可は下りません。
そのまま役所に相談しにいこうと思いましたが、へんなことを教えてしまって逆に注意されるようなことになるかどうかも心配だったので、こっそりと裏のルートで相談してみました。
・解決策の案
その結果いくつかの解決案が出ました。1つは「借地」です。2m足りないので、足りない部分の土地をとなりの敷地から「借りる」ことで使用する土地を2m以上にするということを教えてもらいました。
あとは、商工会議所、議員などから何か知恵がないか相談してもらう、防災の面での安全性を訴えて特例をもらう、など現実的には難しそうな案もありました。
・最終的には
とにかく全員の意見がまとまらないことには話にならないので、結局、話は流れてしまいました。やっぱり土地、建物の権利は大勢の人が所有していると意見が分かれてしまうので、あまり良くないですね。