・子供を使って居留守を使う親
ある賃貸店舗で家賃の滞納がありました。たまたまその店舗の近くの店舗の管理を担当していたこともあって、会社でその店舗の家賃回収の担当になりました。ぼくは、いつも家賃滞納をした人には最初は必ず電話だけで対応します。別に受取に行っても良いのですが、受取に行くと家賃滞納者が取りに来てもらうことに慣れてしまって、わざと振り込まないで取りにこさせようとする人もいるから電話で催促します。そのときもとりあえず電話で催促しました。
携帯電話に電話をかけると店の契約者が出て、滞納の件を告げると
「わかりました。明日、必ず振り込みます」
という良い返事をもらえました。電話口で必ず振り込んでもらえるように約束をし、電話を切って翌日入金の確認をしました。翌日には約束通りちゃんと入金がありました。しかし、次の月もまた入金がありません。また携帯電話に連絡し家賃の催促をすると翌日か一週間以内に振り込んでくれます。
そんなことを半年くらい続けていたら、ついに一ヶ月以上遅れるようになってきました。さすがに一ヶ月以上遅れてくるようならば、退去も含めていろいろと考えないといけません。電話口で優しい声で、
「ぼくの方としてもなんとかまってあげたいのですが、大家さんの方も苦しいので、これ以上家賃が遅れるようなら退去してもらうことになります。」
と。これで、なんとか入金がありましたが、次の月には電話に出なくなりました。何度かけても、留守電にメッセージを残しても折り返し電話してきません。店に行ってもやっている感じがしないので、家に行くことにしました。
昼間に家を訪問してチャイムを鳴らすと子供が出てきたので、
「お父さんはいますか?」
と聞くと可愛い顔で
「お父さんはいまいません。」
と言うので、名刺の裏にメモを書いてお父さんに渡してもらうように、その子に渡しました。名刺のメモには至急連絡がほしいと書いたのですが、1週間近く過ぎても一向に連絡がきません。
そのため、再度家を訪問しました。
チャイムを鳴らして玄関で待っていると、中から大きな声で、
「◯◯(子供の名前)! 俺はいないって言えよ!!」
と家賃滞納者の声が聞こえてきて、ドアが開くと可愛い子供が出てきて、
「お父さんは今いません。」
と答えました。
多分、店の経営がうまくいかなくて家賃を滞納するようになったのだと思いますが、もし経営がうまくいかなくて店を休みにして家にいるくらいなら早く見切りをつけて、迷惑をかけないように店をたたむべきだと思います。
しかし、この家賃滞納者は話をするのが怖くて子供を使って、子供に嘘をつかせて居留守を使ってきました。恥を知らない卑怯者です。
・滞納者には厳しく、事務的に
答えてくれた純粋な子供がかわいそうでした。自分のために子供に嘘をつかせるなんて最低の親です。さっきの声で家の中にいるのはわかったので、
「◯◯さ〜〜〜ん。いるのはわかっているんですよ。
とりあえず話をしにきただけなので出てきてくださ〜〜い。」
と大声で呼びました。すると中から面倒臭そうに家賃滞納者が出てきました。しかも、ものすごく偉そうで横柄な態度です。
「何?」
と、聞くので、
「家賃を滞納していて、電話にも出てくれないんで家にきました。これ以上経営が無理だと思うなら荷物を整理して退去してください。」
と、言うと、
「払わないなんて言ってないだろ。そんなことでわざわざ来るな。」
とまたしても偉そうな態度です。人間って借りるときと返せなくなったときの態度はこうも違うのだと、心底思い知らされました。偉そうな態度に怒りを覚えますが、こちらが怒ってしまえば相手の思う壺ですし、話が進みません。しかし、手ぶらでは帰れませんので、
「どちらにしろ、◯月◯日までに滞納額全額の入金をしてもらうか、荷物を整理して退去してください。中に荷物が残っていた場合には片付け費用を請求します。
もし、期日までにどちらもおこなっていない場合は、すぐに裁判の手続きをします。確認のためにこちらにサインと印鑑か拇印をください。」
と、用意してきた、◯月◯日までの入金か片付けがない場合には云々という内容の書類を出します。手ぶらでは帰れませんからなんとか書類をもらおうと、
「書類にサインしてもらえないのであれば、明日もあさっても訪問します。」
と、一気に畳み掛けてなんとか書類にサインをもらうことができました。法的にはそんなに効力がない書類ですが、何かあったときに役に立つかもしれないので、もらっていて損はありません。
結局、約束の期日には荷物を整理して退去していきました。最近は、こんな感じの家賃を払っていないのに開き直る恥知らずの滞納者が多い気がします。さらに、子供に嘘をつかせて居留守を使うなんて最低です。
しかし、今後世の中が不安定になれば、こういった家賃滞納者はもっと増えるでしょう。これからの大家さんはそういった人たちと戦っていく覚悟をもった方が良いです。