今までアパートやマンションを借りるときには敷金や礼金を支払うことが多かったのですが、不動産市況が悪化してから競争が激化し、多くの不動産会社が大家さんに提案するのが「敷金、礼金0円」物件です。
たしかに広告を出したときの反応は良いですし、初期投資も抑えられるので人気ですが、だんだんとその仕組みを知った借り手に疑われるようになってきました。
◆敷金、礼金0円物件の仕組み
敷金、礼金は部屋を借りるには必ず必要なものという認識がある借り主が多く、それが0円になるということで一時期人気の物件になりました。
しかし、大家さん側から見るとこれは苦し紛れの方法です。
敷金とは部屋を借りる人が事前に大家さんに支払う保証金のようなもので、だいたい家賃の3ヶ月分を払うというところが多いようです。人気の無い物件だとこれを2ヶ月、1ヶ月、0円などと下げていくことになります。そうなると大家さんは入居者に家賃滞納して逃げられたりしたときの補償がなくなるわけです。
礼金はもともと戦後の住宅が少ない時に大家さんに「貸してくれてありがとうございます」というお礼のようなところから始まっているので、礼金0円というところも増えてきています。
◆敷金0円の退去時は?
普通、部屋を借りて出るときには「原状回復」といって、自然損耗以外の部分を部屋を借りたときの状態に戻して、その費用は敷金から差し引いて敷金を返還します。
しかし、敷金0円物件では敷金がないので、部屋を退去するときには原状回復にかかる実費を引越した後に請求するしかありません。そうなると面倒なので大体は「退去時はクリーニング代として〇〇円支払うこと」と契約書に明記されていることがあります。
◆普通よりもめやすくなる
借り主にとって敷金を最初に支払った場合は、原状回復後にお金が「もらえる」イメージですが、退去時に払う場合はお金が「出て行く」イメージになります。そうなると借り主は支払うことを渋るためにいろいろとごねたりします。「部屋をそんなに汚していないので、もっと安くてもいいんじゃないか」とか「消費者生活センターに相談したい」とか言われると大家さんは面倒です。すでに遠方に引越し済みの場合は、支払いを無視する人も出てくるかもしれません。
そうなれば今度はお金を回収する手間がかかります。不動産会社がすべて責任もってやってくれればいいですが、敷金0円にするような物件は魅力が低く、不動産会社にとっても利益の少ない物件であることが多いため、なかなか協力してくれないところも多いでしょう。
さらに先日ヤフーニュースに「お金がないときは助かるけど、、、裏がある場合も?敷金礼金0・0物件のここに注意!」なんて記事も掲載されましたので、今後は入居者の目も厳しくなっていくことでしょう。
敷金礼金0・0は大家さんにとって苦肉の策だということを覚えておいてください。もし、不動産会社が提案してきたら、どこまでの仕事をしてくれるのかの確認も必要です。